恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
杏寿郎が運転する車はベイブリッジを抜けると、下道に降りた。
そして赤色で点灯をした信号機の前でゆっくりと停車する。
彼はハンドルを持っていた両手から左手を離し、助手席に座っている七瀬の右手をそっと握った。
「日曜日なのが本当に残念だ」
「杏寿郎さん……」
ふう、と1つ息をついた彼は「行くぞ」と力強く声をかける。
信号が赤から青に変わったタイミングで、七瀬の右手を握っていた左手をハンドルに戻し、車は彼女の自宅へ向けて走り出した。
★
それから3週間経ち ———
七瀬が北海道へと旅立つ日が、いよいよ明日に迫って来ていた。
「良いのか?今日は実家で過ごさなくて」
「はい、大丈夫です。荷物はおととい必要な物を送りましたし……」
「あ、いや。そうではなくてな……ご両親と一緒に過ごさなくて良いのかと」
「ふふ、ありがとうございます!父からはちょっと言われましたけど、母が説得してくれました。前世からの縁ある2人なんだから、旅立つ前日ぐらい好きな人と一緒に過ごさせてあげてって」
ソファーに座る杏寿郎の右に腰を下ろした七瀬は、にっこりと笑いながら彼の右腕に自分の両腕を絡めた。
「君のご両親は相変わらず前衛的だな。付き合っている事を報告しに行った時もそうだったが……」
「まあ、私の恋人が杏寿郎さんと言うのもあるでしょうね。それに母はもちろん、父も大正時代の記憶を取り戻していますし……とは言え…」
言葉を濁す恋人に杏寿郎は「どうした?」と問いかけた。すると言いづらいのか、七瀬は彼の右耳に口を持っていく。