恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
それからコスモワールドに入園した2人は”コスモクロック21”と呼ばれている観覧車に向かった。
この観覧車は全高112.5m、定員480名の世界最大の時計機能付き大観覧車だ。
約15分の空中散歩は昼と夜で見える景色に違いがある。
昼は横浜の一望をぐるっと360度見渡す事が出来、夜は宝石をちりばめたような美しい夜景を満喫出来る。
時刻は夕方18時前。
「夕焼けから夜景に変わる瞬間が、はっとするぐらい綺麗だそうです。友達から聞く度にもう絶対絶対杏寿郎さんと乗るんだーって……」
観覧車に乗車した2人は隣あって同じ椅子に腰掛けている。
七瀬が言う通り、周りの景色は橙色の夕空から濃紺の夜空へとバトンタッチする時間帯に差し掛かっていた。
「マジックアワーでしたっけ?」
「……ああ、映画にそんな作品があったな」
マジックアワーとは——
日没後の「太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」を指す写真・映画用語の事である。
「………」
「………」
沈黙が支配する中、観覧車はゆっくりと上昇していく。それと共に七瀬の鼓動も速くなる。
「あっ…」
「どうした?」
「いえ……もうすぐ1番上だなあって」
「ふむ、そうだな」
『杏寿郎さんは…知ってるのかな』
この時、七瀬の脳内にはこんな事が思い出されていた。
『観覧車が1番上に来た時はやっぱキスかなあ〜。でもあっという間に過ぎちゃうから、長くやってると他のお客さんに見られちゃうよー七瀬も気をつけてね♪」
昨日スーパーで偶然会った香澄が在学中に言っていた発言だ。
「わっ、1番上来ましたね。高くて少し怖いけど」
“凄く綺麗です”
彼女のこの言葉は杏寿郎の唇によって、吸い込まれてしまった。