恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
「杏寿郎に限らず、寂しさを感じているのは俺も千寿郎も一緒だ。君はもう煉獄家の一員だと思っている。だから、帰京した際は今までと同じように気兼ねなく来て欲しい」
「あら、槇寿郎さん。私だって寂しいのは一緒ですよ?と言う事で、七瀬さん。我が家にも是非立ち寄って下さいね!」
槇寿郎に続いて、瑠火も七瀬にあたたかい言葉をかけてくれる。
「はい……槇寿郎さん、瑠火さん。ありがとう……ございます」
その言葉を発した彼女はぽろぽろと涙をこぼした。
ひっくひっくと体を震わせ始めた七瀬を見かねた杏寿郎が、背中をさすり出す。
あたたかい彼の掌に一段と温もりが増しているような気がした。
それから目が真っ赤になるまで涙を流した七瀬は、出された食事を涙の味と共に全て食したのであった。
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「すみません、恥ずかしい所を見せちゃって……」
「なに、全く気にする事はない!父上も言っていたが、七瀬は大正の頃から長く煉獄家と関わりがあるんだ。俺も君は我が家の一員だと思っている!」
七瀬と杏寿郎は食事が終わった後、縁側に来ていた。
ここは大正時代に恋人同士だった頃、よく一緒に過ごした大切な場所。
2人が座っている中央には、ほうじ茶が入った湯呑みが置かれており、先程互いに飲み終えたばかりだ。
「今年からしばらく満開の桜も見れないし……お花見も出来ないから残念です」
「案ずるな!ずっとではなく、数年の辛抱だ」
「ありがとうございます……自分で決めた事だけど、毎年杏寿郎さんと見ていた景色がしばらくお預けになるのは、やっぱり寂しいです」
今はまだ蕾が芽吹くか、芽吹かないかの時期の為、桜の木は枝しか目に入らない。
「ここの桜を見ないと、私の中で春が始まらないんです」