• テキストサイズ

恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎




「杏寿郎さん、お願いします……」
着替えを済ませた七瀬が、彼に2つの色の容器を手渡した。

「懐かしいな、浅緋色(あさあけいろ)と黄色か」
ネイル液が入ったそれを受け取った杏寿郎は、思わず顔を綻ばせた。


「はい、大正で初めてデートした日に爪にのせた色です。今日は初めて……杏寿郎さんとしがらみがなく、外を歩ける記念の日だから」

「そうだな、では七瀬…手を」

ソファーに座って2杯目のブラックコーヒーを飲んでいた彼は、マグカップをテーブルに置くと、右隣に腰を下ろした彼女の右手を自分の左手にのせる。

まずは浅緋色のネイルを親指、中指、小指にハケで丁寧に色付けた。それが終わると左手の親指、中指、小指にも同じように色を塗っていく。

6本の指のネイルが乾けば、次は残りの4本にも色をのせる。
こちらは左右の人差し指と薬指を黄色で色付けた。

待つ事5分。黄色も乾いた事を確認した彼は、2つのネイル液が入った容器を七瀬に返す。


「ありがとうございます!来月からしばらく杏寿郎さんに塗ってもらう機会も少なくなるんだなあと思うと寂しいです……」

“私が塗るより綺麗に塗ってくれるから”

そう発言した彼女を、杏寿郎は後ろからそっと抱き寄せた。
彼の右手が七瀬の右手にゆっくりと絡み、その爪先に落ちるのは柔らかな口付けだ。


「ん……どうしました?」
少しくすぐったさを感じた彼女が、身をよじる。

「君が言うように、こうやってネイルを毎週塗る事もしばらく無くなるのだな、と……俺も実感した所だ」

彼は色づいた七瀬の指先を親指の腹で、1つずつなぞっていく。
右手が終われば左手も同様に、だ。
恋人のその優しい仕草に七瀬は胸がきゅん、と切なくなってしまった。



/ 938ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp