恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
「まだ6時だ。もう一度繋がるか?」
「えっ……?」
杏寿郎は七瀬の左腰を柔らかく撫でながら、そんな事を彼女に言った。
「無論、君のここが大事ないのであれば……の話だが」
左腰の次は右腰を撫でていく杏寿郎。彼の手つきはどこまでも優しい。
『……昨日の夜もたくさん繋がって、正直辛い。だけどそれでも ——』
「……たい、です」
「ん?もう一度言ってくれるか」
彼の掌が七瀬の右腰から右頬に移動し、杏寿郎の顔が彼女に近づく。
「七瀬はどうしたい?」
「んっ……」
小さな口付けだった。啄むそれが2回程交わされると、今度は2つのおでこがコツンとあたる。
「………」
「………」
「……私も、あなたと…つな……がりたい」
「無理はしてないか?」
『してないとは言えないけど……それでも彼に触れてほしいし、触れたい』
コクン、と縦に一度彼女の首が振られる。
そんな恋人の様子を微笑ましく見ながら、杏寿郎はにこりと笑った。
「……ありがとう。七瀬は優しいな。しかし、言い出した時分で申し訳ないが、これで留めるとしよう。辛いのだろう?」
その言葉の後、再び啄む口付けが七瀬に落ちる。
すると遠慮がちに彼女は頷いた。
「すみません……気持ちは……杏寿郎さんと繋がりたいと思うのですが……」
「構わん!その代わり、しばらくこうさせてくれ」
杏寿郎の体が恋人の体を包み込むように抱きしめると、七瀬も自分の両腕を彼の背中に回した。
『あったかいな……あ、どうしよう……また眠く……』
数秒後、穏やかな寝息が部屋に響く。
『寝たか……』
七瀬の寝顔を確認した杏寿郎は彼女のおでこに口付けを1つ落とした。
滑らかな頬をそっと撫でると、ふふっと笑みが七瀬の口元に浮かぶ。
『今日から堂々と2人で外を歩けるな、七瀬』
杏寿郎は恋人にもう一度口付けを —— 今度は唇に落とすと、自分も両の瞼をゆっくりと閉じた。