恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
遮光カーテンが早朝の日の光を部屋に招き入れない中、セミダブルのベッドにかけられたシーツが、緩やかな動きを見せる。
「んっ、きょうじゅ……」
「煽ったのは、君だぞ」
華奢な七瀬の体を、大きな杏寿郎の体が優しく包むと、数回互いの唇が弾む。
既にあたたかいベッドの中が、ここからもう1段階熱さを増していきそうな雰囲気だ。
ドキドキと速度を増していく恋人の鼓動を聞いた杏寿郎は、ふっと笑顔になる。
「あ、その顔は楽しんでますね」
「……少しな」
『こんな所さえも好きだなあと思うんだから、やっぱり私は翻弄されっ放しだ。でも……』
「どうした?」
優しい眼差しと愛おしげに左頬を撫でてくれる大きな右手。七瀬は自分の左手を上からそっと重ねて、目を閉じた。すると ——
「んぅ……」
ちう……と深く長い口付けが彼女に降って来た。杏寿郎の舌はそのままするり、するりと歯列を再び辿り、それが終われば七瀬のあたたかな舌をちう、と吸い上げた。
彼の顔が七瀬から離れると、目の前にはしてやったりと言った杏寿郎の表情がある。
「せっかく杏寿郎さんの掌の感触を味わってたのに……」
もう、と言いながら彼の首に手を回す七瀬だ。
「口付けの前に君は目を閉じるだろう?故に求めてるのかと思ったのだが……違ったか?」
…………違うとは言い切れない。
七瀬の胸中を支配するのはそんな思いだ。基本的に彼女は恋人からの愛情表現を拒む事はしない。
「違いません」
「そうか、ならば良かった」
またにっこりと笑顔を見せる杏寿郎にきゅん、とときめく七瀬。
「俺は朝でも夜でもいつだって、君を感じたい。だから……」
“しっかり愛でさせてくれ”
彼からの優しい愛撫がまた始まった。
「あっ……やっ」
杏寿郎の唇が首、鎖骨の順で辿っていった後に訪れたのは甘い痛み。昨晩咲かせた赤い花の隣に、もう一輪花が咲いた。