恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
「同じ通訳だった女性と結婚した。その子供が俺だ」
「うわあ……ちょっと感動です」
七瀬の胸が暖かい気持ちでいっぱいになった。
そして、義勇は彼女から滑走路へと視線を移す。
「沢渡」
「はい」
この後、数10秒の沈黙。
「今後も色々頼む」
「ええ、もちろん。編集者として精一杯努めます!」
「そうか、良かった」
『良かった……?』
2人は空へと飛び立つ機体を10機程見送った後、空港を後にした。
義勇の中に芽生えた気持ちは2つ。作家と編集者としての付き合いを長く続けれるよう、努力をしよう。
まずこれが一つ目だ。
そして2つ目が ———
★
同時刻、轟出版にて。
「煉獄ー邪魔するぞ。何だよ、お前1人か」
「おお!宇髄……失敬、編集長。どんな御用で?」
「冨岡の恋が始まりそうだから、報告しに来たんだよ」
「む!それはめでたいな!あ、すまん……」
「あー気にすんな、ここは地下だからそのへん問題ねえ」
「トップに立っても、君のその寛大な所は変わらずだな!」
ここは地下1階にある校閲部。
原稿の添削場所をする部署だ。煉獄と呼ばれた男の下の名前は杏寿郎。 地下にはおおよそ似つかわしくない派手な風貌だ。
その太陽を思わせる彼もまた天元の大学時代の後輩であり、義勇の後輩でもある。
「よもや冨岡がエッセイを出すとは思わなんだ。驚いたが……とても面白かったぞ!この帯がまた良いな」
「それな。あいつの新しい担当が書いたもんだよ。竈門と言い、こいつと言い、前向きな部下が多くて派手に助かってんだわ」
「そうか!うちの部署にも最近なかなか面白い部下が異動して来てな……」
杏寿郎の目の前のデスクに座った天元は「続きを聞かせろ」と言わんばかりに、身を乗り出す。