恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
それから半年後 ———
【冨岡先生にとって、初めてのエッセイ”寡黙な打ち潮”は現在二十万部突破、そして今回のエッセイは男性読者からも”冨岡義勇は人間くさい作家だ”と人気急上昇ですが………】
「先生、TV映りもほんっとに良いですよねー」
「そうだろうか?」
七瀬と義勇は彼の自宅で、先月収録されたトーク番組を観ていた。
「この司会者さん、イケメンには相当厳しいんですよ。”顔だけで渡っていける程この世界は甘くない”って色んな所で言ってますから」
「……そうなのか?」
「ええ。過去の恋愛が原因って事らしいです。あっ、これはオフレコでお願いしますね」
「ああ、わかった」
ふっと笑う義勇。そのさりげない笑顔に七瀬の胸が心地よく跳ねた。
「先生がエッセイ書きたいって仰った時びっくりしましたけど、男性読者さんって言う新たな層の方にも手に取って頂けて…私も本当に嬉しいです」
彼女はテーブルに置いてあるマグカップを手に取り、それを一口飲んだ。
「このコーヒー、ミルク入れても濃厚だけど凄く美味しいですね!どこのメーカーの物なんですか?」
「味覚元が出しているコーヒー粉だ。北関東ブレンドと言う商品らしい」
「へぇ〜北関東ですか?面白いですね」
「沢渡、頼みがあるんだが……」
「何でしょうか………」
★
「今日もここは活気付いていますね!」
「そうだな」
七瀬と義勇は再び羽田空港へやって来た。
前回と同じように滑走路にはたくさんの機体が待機しており、地上から離陸する飛行機、そして上空から着陸する飛行機がひしめきあっていた。
今日の展望デッキは平日と言う事もあり、人もまばらだ。
「あれ……?あの時、写真撮ってくれた方ですか?」
「えっ……?」
——— その時、七瀬に声がかかった。