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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊



その後はあの飛行機事故が起こった為、彼の母が購入したマグカップは行方知れずになってしまった。

以来 —— 義勇はこのマグカップをコーヒーが飲みたくなった時に使用している。

お湯を適量淹れた彼はソーサを流しに置いて、ずずっと一口コーヒーを啜った。するとそこへピンポーン……とチャイムが鳴る。
応答し、その人物を自宅へ招く。

「先生、こんにちは。文庫の加筆作業の進歩はいかがですか?」
「………書けない」
「えっ?どういう事です?」



—— 5分後。
「お話、聞かせて下さい」
七瀬はリビングのソファーに腰掛け、義勇に問うた。


「文庫版の後書き以外は特に思い浮かばなかった」
『なるほど、書けないってそう言う事か……文章が全然書けなくなったかと思ったよ』

七瀬は何故義勇が「気づいたらいつも1人」になるのか。
それを強く実感していた。

『先生は主語が抜ける事が多いんだな。なるほど…』
「わかりました。では編集長にその旨伝えておきますね」

「ああ、頼む……それから」
「はい、何でしょう」

この後は再び沈黙が訪れるが、それを打ち破ったのは義勇だ。


「エッセイが書きたい。物凄く」
「………エッセイですか?」

七瀬の脳内に疑問符がたくさん埋め尽くされた瞬間、である。










「ふーん、エッセイねえ、良いんじゃないか?寡黙な作家の心情を知りたいって読者は一定数いるだろうからな。特に冨岡は女人気が高い。どうせなら文庫と同時発売にしてみるか!新たな読者が増えるかもしれねぇからな」

「はい、編集長ありがとうございます!」

七瀬は会社に戻ると、一目散に天元の元へ向かう。
思いもよらない彼からの即効GOサイン。彼女は一気に気分が高揚した。



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