恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
「編集の仕事に追われる毎日で、なかなか帰省が出来なくて。もう2年帰っていないんです。最後に家族で旅行となると…中学時代まで遡らないと」
「……そうか」
「…………」
「…………」
2人の間にまた沈黙が訪れた。
「飛行機、たくさん飛んでいきますね」
会話を再び始めたのは七瀬だ。
「そうだな」
「……お聞きしても良いですか?」
「何だ」
“鮭大根は家族との思い出の味” 自著に2回も書いたのは何故か。
彼女は義勇にそう問うた。
すると「自分の好物で家族の誕生日には必ず食べていた」と続けて答えが返って来る。
「先生の誕生日だけじゃなくて、ご家族みんなの大事な日に食べていたんですね……素敵です。ハワイに行かれたお話もそうですけど」
「………」
「先生?どうかされました」
彼は再び口を閉ざしてしまう。いや、これはいつもの事なのだが、七瀬はそれでも義勇が纏う雰囲気がどことなく普段より重い事に先程からずっと疑問を抱いていた。
「……う、……ない」
低く小さな声がぽつりと発せられたが、七瀬はハッキリと聞き取れず、もう一度言ってほしい旨を義勇に伝える。
「もう食べれない……みんな、俺以外死んでしまった」
「えっ……?」
キイイイン ———
その時、2人の頭上を空港に降り立つ為に旋回して来た機体が通り抜けた。