恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
トン、トン、トン……!と無事階段を降り終わった七瀬は「助かりました」と義勇に声をかけて、彼の右隣に立った。
「14時ですね。先生これからどうします?」
「……おい、また呼び名が戻っているぞ」
「あ、本当だ!でも先生だって、さっき私を元通り苗字で呼びましたよ?」
「……そうか。ではここからはいつも通りでいこう」
『無理はするなと言う事か』
これは互いの脳内に浮かんだ思いである。
「行きたい所があるんだ」
「へえ……どこですか?」
★
「わー!羽田空港も久しぶりです!」
代官山駅から再び電車に乗った2人は私鉄、JR、また私鉄と乗り継いで空の玄関口と呼ばれる空港にやって来た。
展望デッキは恋人達、親子連れ、年配の夫婦……と多種多様な人達が地上や空を見ている。
動き出した機体、停車した機体、大空へ向かって飛び立つ機体、地上へ降り立つ機体と空港周りも色々な飛行機で、埋め尽くされていた。
「空港って良いですよね。出会いと別れ、それから始発と終着が同時に存在している集合体って感じで……先生、ここには何か思い入れがあるんですか?」
「…………俺が大学に合格した記念に、家族みんなでハワイに行ったんだ」
「へえ、ハワイですか!私も一回だけ行った事があります」
フェンスの網を右手で掴みながら、義勇がポツポツと語り出す。
「姉が発案してくれて…両親と一緒に計画をしたそうだ」
『家族でハワイ…良いな。憧れちゃう』
七瀬はハワイの景色を頭の中で思い出す。
青い空、白い雲。
ハワイとはそんな形容がぴったりと合う国だ。そんな事も同時に感じながら。
「羨ましいです。大人になってからだと、私は友人としか旅行に行った事ないので……」
「そうなのか?」