恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
その週の土曜日。
七瀬は姿見の前で何度も自分の衣服を確認していた。
『沢渡、俺に付き合ってくれ』
義勇のこの言葉に1週間、ずっと振り回された彼女は今一度「これは仕事の一環」……と自分の脳と心に落とし込んだ。
小説の場面をもっとリアルがある物にしたいと義勇が申し出た為、彼と一緒に出かける事になったのだ。
『先生……こう言う服装、好きかな?』
くるんとターンを1回する。するとふわっと下に履いたスカートが舞った。
リブカットソーのショートベストとマーメイドスカート。色はカーキ。足元は淡いピンクのトングサンダルを合わせ、バッグは斜めがけの無地の物で生地は合皮。色はアプリコットである。
これが本日の彼女の服装だ。
『服にピンクを着たらいかにも…になるから、サンダルで十分かな』
カーキの衣服に合わせてさりげなくイエローやオレンジをアイメイクに入れた。
いつも1つ結びにしている肩までの髪は、ワックスを毛先に軽く馴染ませ、シンプルイズベストに仕上げた。
『あっ、そろそろ出なきゃ』
七瀬は財布、スマホ等をバッグに入れて目的の場所に向かう。
★
『あ、先生いた……遠目で見てもカッコいいな」
最寄りの駅からJRで20分。義勇が待ち合わせ場所に指定した場所は恵比寿のフラワープレイス。
彼は四つあるモニュメントの内、Eのそれにもたれてスマホを操作していた。因みに他の3つのモニュメントはLとOとVだ。
「すみません、お待たせしました!」
時刻は午前10時半。5分前に着いたが既に義勇は待っていた。
「いや、俺も今来た所だ」
ドキン、と七瀬の心臓が大きく跳ねる。