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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊


部下から3枚の原稿用紙を手渡された天元は、早速目を通し始める。

「俺、ここ読むの好きなんだわ」

編集長の形の良い唇が綺麗に弧を描く。
彼が読んでいるのは、前書きや後書きと言った本文とは別の部分だ。

「お前、前から派?後ろから派?」

「前と後ろ?ですか……」

さて何の事を言っているのやら?
七瀬の脳内は疑問符で埋めつくされているが、それでも一つの結論を導き出そうとしたその時。


「おい、勘違いすんじゃねーぞ。前書きか後書きか。その事だよ」

『恥ずかしい……』
七瀬の顔の表面温度が程よく上昇する。

「後書きからですね」
パタパタと右掌をうちわであおぐように風を送りながら七瀬が答えた。

「なるほどな、結末知ってそれまでの過程を楽しむって奴か」
「はい、そうです………」

いわゆる”ネタバレOK“と言う性分の事だ。

「冨岡は文章だとほんっと饒舌になるんだよなー、これだけ書けるんなら普段から喋りゃ良いのによ」

「確かに……私も同感です」


単行本の後書きにも書いてあった”鮭大根は家族との思い出の味です” この一文は文庫版の後書きにも記してあった。

『自著に2回も書くぐらいだから、相応の理由があるんだろうな』

“知りたい” —— 七瀬の心はそんな思いで埋め尽くされていく。








「えっ?私とですか?」
「ああ、お前が1番頼みやすい」

宇髄編集長から文庫版の後書きにOKを貰った七瀬はその日の午後、義勇宅に来ていた。


「沢渡、俺に付き合ってくれ」

ややもすると、デートだと思わせるような事を言う義勇。

彼女は何度も勘違いしそうな脳内に待ったをかけ、更に「これは仕事だ」と何度も言い聞かし、当日を迎えた。


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