恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
とある日曜日。
〜鮭大根〜
材料: 甘鮭、大根、水、料理酒、みりん、醤油、顆粒だし、おろし生姜、米のとぎ汁
七瀬は自宅のキッチンでレシピアプリを確認しながら、義勇の好物を作っていた。
『まずは自分で作ってみないとね』
鮭大根は下拵えから煮込みまでの時間を概算すると、大体20分〜25分だ。しかし、鮭と大根に味をしっかり染み込ませようと考えるとそこから2時間〜3時間を要する。
「どうかな、味染み込んだかなあ」
逸る気持ちを落ち着かせながら、七瀬は鍋の蓋を開ける。
「わっ……良い感じかも」
こっくりした茶色に染まった半月状の大根に、ほろっと柔らかくなったサーモンピンクの身。
醤油とみりんと酒。この3つの定番調味料を使えば大体味付けは上手くいく。
そして更に食欲をそそるのが生姜の香りだ。
『冬にぴったりのレシピって所かな』
「いただきます」
1DKのマンションが七瀬の住処で、リビングの広さは約8畳。寝室は6畳だ。
リビングに置かれた2人掛けのダイニングテーブルに鮭大根を含めた夕食が置かれていた。
今夜のメニューは白飯、豚汁、マカロニサラダに鮭大根。
七瀬の好きな組み合わせだ。忙しい編集職だが、休日はなるべく自炊をするように心がけている。
「んっ、鮭大根美味しい」
鮭にも大根にも濃すぎず、薄すぎず、バランスよく調味料が染み込んでいた。
『家族との思い出の味です』
義勇は寡黙故、メディアの取材はあまり受けないようにしているのだが、それでも年に2、3回は雑誌のインタビューを受けるようにしている。
七瀬は夕食を作り始める前、昨年の義勇の記事に目を通していた。すると鮭大根は彼にとって大事な食べ物と言う事がわかった、と言うわけだ。