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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊



—— 翌日。

「はあ?担当変えてくれだあ?馬鹿言うな!こないだ変えたばっかだろーが」

左耳にあてていたスマホの「切」ボタンをタップした天元は、ため息と共にそう言った。
彼のデスク前には、七瀬が冴えない表情で立っている。

「すみません、私に冨岡先生というのは分不相応だと思うんです……」

彼女もまたはあ…とため息をつきながら、上司に再度嘆願をした。
2つのため息を見かねた1人の男が七瀬の右隣に並ぶ。
彼女と同期の編集者 —— 竈門炭治郎である。

「編集長!俺、沢渡と話してきますね。もうすぐお昼になりますし……よろしいでしょうか?」

「おう、任せた」
天元はまたスマホをタップし、どこかへ電話をかける。











「冨岡先生の担当になったんだってな?」

「うん……先生さあ、あまり話さないだけじゃなくて凄くマイペースなの。会話が噛み合わなくて……」

炭治郎と七瀬は入社日が一緒、歳も同学年…いわゆる同期だ。恋愛関係ではないが、2人は互いに心を通い合わせており、よく愚痴を聞いたり聞いてもらったり。
そんな持ちつ持たれつ、の関係性だ。

「俺も一回だけ冨岡先生と話した事あるけど、あまり話さないから確かに何考えてるかわかりにくいよな。でも先生、優しい所もあるぞ」

『そう、なのかな』
七瀬の脳内に思い出されるのは、塩大福を気に入った義勇がそれを食べる事に夢中になっていた姿だ。

『あ、でも好きな物を食べている表情はちょっと癒された』

「鮭大根が好物だって聞いた事ある。持って行ってみたらどうだ?」

「えっ、鰤大根じゃなくて鮭大根?」

「うん、鮭大根」

“鮭大根”

居酒屋メニューにありそうでないこの3文字は炭治郎の言う通り、義勇の好物だ。それも”大”がつく程の。


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