恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
最初はいい。何故か?
寡黙な性格から”ミステリアス”と相手が都合よく受け取る為だ。
しかし2ヶ月、3ヶ月と共に過ごす内に段々と女性側が不安になってしまう。
よって”何を考えているのか……”と言う理由で、恋人が去るのだ。
当の本人は、と言うと ———
「気がつくと、いつも1人になっているんだ」
ここは都内中心部より少しだけ西側の区域にある40階建てのタワーマンション。上中層部分の30階に義勇は居を構えている。
七瀬は彼の好物と言う以心伝心の塩大福を持参して、義勇の自宅にやってきた所だ。
寡黙な義勇は必要最低限の家具しか置いていない。
売れっ子作家の部類に入る彼だが、1番広いリビングはわずか10畳程のスペースだ。
置いてある家具は冷蔵庫、コの字型の4人掛けソファー、水色のラグマットの上にダイニングテーブル、35インチのテレビの四つのみ。
義勇は黒い革張りの上質なソファーの真ん中にちょこんと座って、好物をもぐもぐと食べている。
『メガネとジャージ姿でもイケメンはやっぱりイケメンだなあ』
七瀬は義勇から見て斜め左の位置のソファー部分に腰を下ろしていた。
「今日はどんな要件なんだ?」
口にしていた塩大福をようやく食べ終わり、ずずっと湯浴みに入れてあるほうじ茶を飲む。
七瀬は1階の外部インターフォンから「担当が変わるので、挨拶をしたい」と告げる為に義勇の前任者と共に、ここまで来た。
次の作家の所に行かないといけない —— その言葉を義勇と七瀬に告げた前任者は玄関先で「お世話になりました」とだけ告げ、足早にこの場を後にした。
尚、冒頭の「気づくといつも…」発言は恋人だけではなく、彼を担当している編集者についても同じ事が言える。