恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第44章 口は難し、筆は饒舌 / 🌊
「ふーん、お前アイツに気があんだな。やっぱ」
「何ですか?それ……」
『気がある?何でわかるの?そしてやっぱりっ……てどういう事……?』
突然の担当替えに続き、密かに心を寄せていた作家への思いをぴたりと言い当てられてしまい、今日の七瀬の脳内は忙しない。
「あのな、俺曲がりなりにも編集長なの。部下が普段どんな事を考えて仕事しているのか、どんな思いを他の奴らに抱いているのか。それぐらい把握済みだっつうの」
『そうだ、宇髄編集長はこう言う人だ……』七瀬はそれを毎日実感している。
「出版業界の華麗なる雄とは俺の事だ!」
ビシッと右親指を自分の顔にやり、ドヤ顔を見せる天元。
「………はい、派手にそうでした」
「おいこら、俺の真似すんじゃねえよ!」
「いたっ!もう……加減して下さい」
強烈なデコピンが七瀬に降りかかったが、これは天元なりに彼女を気にかけている証拠だ。
「じゃ、頼むな。あ、あいつまたフラれたらしいぜ」
「………これで何回目です?」
「知るかよ、そんなもん。100回目とかそんな所じゃねーの」
『ありえるかも』
——— 冨岡義勇と言う作家について少し記しておこう。
本名は同じ。
ペンネームを本人は考えたそうだが、天元の「充分ペンネームっぽい。女ウケしそう」この一言で義勇は本名での世に登場となった。
そして天元の采配は前述の通りである。
彼と義勇は同じ大学の先輩後輩同士で、天元が先輩にあたる。
“冨岡くんって何考えてるか全くわからない”
義勇は容姿端麗だ。その見た目もあり、幼少の頃より異性から思いを告げられる事が今までもたくさんあった。
だが、上記のような理由で3ヶ月を過ぎると、大体相手から振られてしまう。