恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第43章 見えない艶っぽさを求めて / 🎴✳︎✳︎
「善逸に話した。予想通り食いつきが凄かったぞ」
送信ボタンをタップした。待つ事5分 ———
ブルル…と手に持っていたスマホが震える。
俺は緑色のメッセージアプリのアイコンの右上に「①」と赤く表示されているのを確認すると、そこをタップした。
「あはは〜!!やっぱり期待を裏切らないよね。週末楽しみにしてるね♡」
ドクン、と跳ね上がる心臓。
七瀬と付き合い始めて令和では3年が経つが、今だにこの語尾に時折打たれるハートマークには心が反応する。
こう言ったように、俺は3年経っても恋人にドキドキさせられっぱなしだ。そんな彼女にある日突然こんな事を言われた。
“見えない所に気を配ってこその身だしなみなんだって”
先週末、彼女の1人暮らしの家に遊びに行った時の発言だ。
見えない所ってやっぱり……その……あれだよな。
頭の中にそれらを身につけている恋人の姿が急に思い浮かび、一気に顔と体の体感温度が上昇した。
因みに色は黒だ。
やばい!俺、真昼間から何考えてんだ……!
その場で頭を抱えてジタバタとしていると、すれ違う男子学生や女子学生が、こちらに怪訝な表情をチラチラ向けながら通り過ぎていく。
………今日は水曜日。週末まで後3日だ。
空を見上げれば今しがた自分が頭に描いた映像とはおおよそ似つかわしくない、爽やかな光をくれる太陽がそこにはあった。
ふう、と深く長い深呼吸を一度した俺は屋内に戻る足を速めた。
そして 、土曜日がやって来た。頑張れ、俺!
長男の俺ならきっと成し遂げる事が出来るぞ!
こんなよくわからない気合いを体に落とし込み、決戦の舞台へとその第一歩を力強く踏み出したのである。