恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第42章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜② / 🎴
「えっ……炭治郎?何で制服姿………」
「七瀬、大丈夫か?過去に行ったと思ったら5分もしない内に戻って来たんだぞ!」
そうなの??
私はうつぶせの体勢からパッと飛び起き、隊服の胸ポケットを探る。
「スマホがない………」
え?何で??確かに入れたのに!!せっかく元の令和の時代に戻って来て安心したのも束の間。私の背中に冷や汗がつつーとたくさん流れ始めた。
「それなんだけど実は……」
炭治郎から紡がれる事実に私は気絶するんじゃないかと言うぐらい衝撃を受ける。
——— 次の日、キメツ学園の屋上。
私は炭治郎と一緒にしのぶ先輩からここへ来るよう呼び出された。
「はい、これお二人にお返ししますね」
彼女が手に持っていた黒い樹脂製のケース。大きさはペンダントが入る物と同じ大きさだ。
お礼を言いつつ、恐る恐る中を確認するとそこには……
「100年以上の時を経て手元に戻って来るなんて、本当に摩訶不思議な出来事ですね」
「はい………」
やや色褪せた感はあるけれど、それは緑の市松模様のスマホケースに覆われた炭治郎のスマホだった。
「あの日の七瀬さんは明らかに挙動不審でしたから、気になってたんですよ。アオイに聞いてみても、すみ・なほ・きよに聞いてみても急に異国の言葉を話し出したり、ハグをしたり……と言った理解しづらい行動をしていた」
その後アオイちゃんの仕事を手伝っている時に私は汗をかいたので隊服の上衣を脱いだ。
その拍子に胸ポケットから落ちたようで、そのままになっていたスマホをたまたましのぶ先輩が拾った。
「私は本当に驚きました。今まで生きて来た中で見た事がない物体が目の前に現れたんですから」
そしてスマホケースが炭治郎の羽織柄と同じだった事にピン、と来たしのぶ先輩。
大正炭治郎が蝶屋敷に来訪した際に問いただすと………
つまりはこんな経緯だったらしい。
「保管方法がなかなか大変で。どうやって令和まで守り通すか……これには骨が折れました。子孫になる方に開封しないよう文を残したりもしましたしね」
「すみません……でも100年と少しの長い間、蝶屋敷で守って頂いてありがとうございました」