恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第42章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜② / 🎴
「じゃあ……2人共気をつけてね。行ってらっしゃい」
「うん、七瀬ちゃんも。明日には向こうに戻るんだよね?じゃあこれが最後だったりするのかな」
………そうかもしれない。
「また未来でね!……で良いのかな?何か変な感じだけど」
「そうだね……」
“またね”と善逸と挨拶を交わし、山吹色の羽織が見えなくなるまで私はその姿をずっと見ていた。
「ちょっと妬けるな」
「え?何それ」
左横にいる炭治郎を見ると、やや複雑そうだ。
「だって今の、恋人を見送るみたいだったぞ?」
「それはほら大正の善逸にはさっき言ったようにもう会えないかもしれないから……」
「ごめん、どうにもならない事を言ってしまった……」
ふふ、こう言う所まで令和の彼と一緒なんだな。心が少しだけほっこりとした。
「大丈夫だよ!ほら、炭治郎も行って来て」
彼の背中を両手でパン、と一回軽く叩いて少しだけその体を押す。
令和の炭治郎よりも逞しい背筋だった。大正では毎日毎日刀を振るっているもんね……。
「じゃあ行って来ます」
「うん、行ってらっしゃい」
炭治郎とも”またね”と挨拶を交わす。その後、緑色の市松模様が小さくなるまで見送る。
『さて、2人は任務に向かった。これから明日までどうやって過ごそうかな………』
私は右手人差し指でおでこを2回トン、トン……と押した後は徐に歩き出した。
こちらの私は単独任務で東京府内に存在している。予定より早く終わってうっかり鉢合わせ、なんて事も考えられなくはない。
藤の家に行くのが1番良い方法と言うのはわかっている。けれど、せっかく大正の時代にやって来たから探索もしてみたい。
そんな好奇心も少なからずあるのが事実。
どうしよう、どうしようと逡巡しながらたどり着いた先は ———