恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第40章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜 ① / 🎴
「竈門、沢渡。お前達、BTTFの事は知っているか?」
「BT……?何ですか、それ」
伊黒先生の質問に困惑の表情を浮かべる炭治郎だ。
「バック・トゥ・ザ・フューチャーの略称ですよね」
「何?沢渡!お前、知っているのか?」
首元に巻き付いている白蛇……鏑丸さんと一緒に目を見開き、心底驚いている化学教師。
父親と母親がこの映画が大好きで、付き合い出したきっかけの作品という事を伝えると、ううむと腕組みをしながら唸る先生だ。
「2015年にパート2の時代設定と同じ年になったからイベントがあったんですけど。2人共子供の私そっちのけで出かけましたからね」
こんな両親なので、もちろん自宅には3部作のBlu-rayが常備してある。
「お前のご両親は素晴らしいな。是非共BTTF談義をしたい所だ」
「先生もお好きなんですね……」
意外だった。伊黒先生も好きなんて。小さな頃から何度も観て来た作品だから、私もストーリーは把握済みだ。
「あの……すみません、俺にもわかるように説明して頂けると助かります」
1人蚊帳の外で何が何やらわからない炭治郎に私と伊黒先生はかいつまんでBTTFの概要を説明していく。
「なるほど。タイムスリップ映画の金字塔と言われている作品なんですね」
「そうだ!タイムトラベルだけじゃなく、色んな物が秀逸なんだ。俳優、女優、ストーリー……。やはり何と言っても音楽だな」
伊黒先生の右腕にグッと力が入る。
「先生、お話ありがとうございます!今日早速七瀬と一緒に観てみます」
「そうだな。百聞は一見にしかず。俺が説明するより、実際観た方が納得出来るだろう」
“何かわかったら必ず報告しろ。俺も一緒に考えてやる”
職員室から出る際、こんな事を先生に言われた。
「来た時と帰る時で、先生の対応が180度変わったなあ。いや、ありがたい話なんだけどさ」
「私もびっくりした。まさかBTTFの話が出て来るなんて思わなかったからね……」
そのきっかけになった両親 —— 特に父親とは高校生になってからどことなく距離が出来てしまい、あまり会話をしていない。
映画を観ながら久しぶりに話してみようかな。