恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第40章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜 ① / 🎴
「無くした場所ってどこなんだっけ?」
「学校の裏山の入り口。たまたまあっち方向に用事があって通ったんだ。そしたら気づいた時にはもうズボンの中に無かった」
「人じゃなくて、スマホだけ無くなるなんておかしな神隠しだよね」
「確かにそうだな」
そんな会話をした後、私と炭治郎はその問題の場所に出向いてみた。
「なんて事ない場所だよね」
「そ、本当に何て事ないんだよ」
ここの裏山は令和になった現在でもごくたまに鬼が出て、何回か討伐した事がある。でもそれだけだ。物が無くなった。ましてや人が行方不明になった —— なんて聞いた事がない。
「そうだ。思い出した」
「ん?何を?」
左隣に立っている炭治郎が”ひらめいた”と言うポーズをしながら発言した。グーに握った右手を左掌にポン、と当てるあれである。
一休さんが閃いた瞬間とでも言おうか。
「スマホが無くなる瞬間さ、空間がほんの少しだけ歪んだ気がするんだ。ちょっと気持ち悪くなった」
「空間が歪む……」
「ああ」
スマホだけ無くなる、空間が歪む、気分が悪くなる……。
私は1つの仮説が頭に思い浮かぶと同時にある人物の顔も頭に思い描いた。
「おい、くだらん話なら聞かんぞ。それにわかっているのか?俺の担当教科は”科学”ではなく、”化学”だ。ばけがくだぞ。スマホが時空を移動だと?そんな非現実的な事が起こるわけがないだろう」
炭治郎が新しいスマホを購入した次の日の休み時間。私と彼は職員室にやって来ていた。目の前で対応してくれているのは、化学教師の伊黒先生だ。
“科学”と”化学”の違いは先生の言い分がもっともなのだけど、頼れる人が彼しかいないと判断して尋ねてみた所、開口一番そう言われた。
「でも先生、この世って不可思議な事ばかりじゃないですか。鬼の討伐だってその不可思議に該当すると思うんです……」
「沢渡、お前は本当にああ言えばこう言う女だな」
伊黒先生も同じだと思う。それに先生の方が発言にキレがありますよ……と喉元まで出かかったけど、これは言うのをやめておいた。