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恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第39章 雪嵐は春の訪れと共に / 🔥


「矢代が君の育手か!息災なのか?」

「はい!先日の任務で師範のお宅の近くに出向いたので、お会いしに行って来ました」

今日の勝負は槇寿郎さんが審判を担当してくれる事になった。だから彼も庭に出て来たのだけど、紗雪と槇寿郎さんは初対面だと言うのに何だかとても気が合っている気がする。

矢代勝喜さん—紗雪の育手であるこの男性は、煉獄家の分家に当たる血筋だ。だから炎の呼吸を使用する事が出来る。

“師範の所から巣立つ時さあ、上の者に対しての言葉遣いについて散々釘を刺されたんだよ。うっせーなあって言うのが正直な本音だったんだけど、本当師範の言う通りだった”

これは先程紗雪が私に杏寿郎さんが凄くカッコいいと評した後、続けて漏らした言葉だ。
“矢代さん、ありがとうございます!” 一度も会った事がない育手さんだけど、私は心の中で彼に両手を合わせて感謝をした。



「炎柱、改めましてお願い致します。階級丙(ひのえ)天童紗雪です。手加減は一切なしで構いません」

一礼をした後、木刀を中段に構えた紗雪ははっきりと、そして堂々と杏寿郎さんに伝える。


「煉獄だ。無論手加減などする気はない」

彼は紗雪の挨拶を聞いた後、本当に嬉しそうに笑った。そして一礼をしたのち、驚いた事に杏寿郎さんは珍しく木刀を上段に構える。


私との稽古の時でも片手で数える程しか見た事がない構えだ。

上段の構え—それは別名「火の構え」と言われるほど完全攻撃型の構えである。
相当な自信と度胸、尚且つ腕力がないと上段で剣を交えるのはとても難しい。けれどもこの3つの釣り合いが取れている彼にとっては何の問題もない。

「兄上が最初から上段で勝負されるなんて…。天童さんは余程の実力者の方なんですね!」

「うん、紗雪は女子ではあるけど力がとても強いの。腕相撲もいつも私は勝てなくて……」

縁側に座った私と千寿郎くんは竹筒にお茶を注ぎながら、話す。
これは杏寿郎さんと紗雪に渡すお茶である。


「時間は15分一本勝負だ。始め!!」
そして、槇寿郎さんの声がお庭に凛々しく響き渡った。


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