恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第39章 雪嵐は春の訪れと共に / 🔥
頭からプシュー……と湯気が出るかのように顔と身体が熱くなる。
そんな私を実に楽しげな様子で見ている恋人。
“ダメ押しだ”
そう言わんばかりに後数回指先に口付けを落とすと、そのまま自分の胸の中に抱き寄せ、ぎゅうっと私を包んでくれる。
「七瀬と出かける事も、天童少女との勝負も楽しみだ」
最後にもう1つ唇に温もりが届き、私の身体と心は完全に沸騰したのだった——
それから5日後、煉獄邸の桜の木に小さな花が開いた朝。2年に一度の割合で春に雪が降るように、遅れて来た雪嵐が来訪する。
「おはようございます!天童です。炎柱、今日は私の勝手なお願いを聞いて下さりありがとうございます!」
杏寿郎さんと門扉を開いた私は、礼儀正しく挨拶をしてくる紗雪に少し面食らってしまう。
“絶対私に話しかけるような口調で会話したらダメだよ!それだけはお願いね”
“わかってるってー!あたしだってちゃんとその辺はわきまえてるぞ!大丈夫、大丈夫!”
バンバンと私の背中をいつもの調子で叩く彼女に大丈夫なのか、本気で心配していたのだ。
「おはよう、よく来たな!天童少女!こちらはもう準備万端だ。君はどうだ?」
朝からよく通る声で話す杏寿郎さんは何だかとても楽しそうだ。
「はい!私も問題ありません。早速お願いしたいです」
杏寿郎さんに話しかけられ、瞳をキラキラと輝かせる紗雪も勝負するのが本当に楽しみな様子。
私が中に入るよう促すと”炎柱、すっげーかっこいいな”と私の耳元でこっそり喋る紗雪。
やっぱりそう見えるか…と心に嬉しさ半分、ちくっと刺すような痛みを半分ずつ感じながら、門扉を静かに閉めた。