恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第39章 雪嵐は春の訪れと共に / 🔥
「すみません……杏寿郎さん……」
私は紗雪の熱すぎる熱意に根負けしてしまい、彼の非番の日を伝えてしまった。
1か月……?2ヶ月?それぐらい久しぶりのはず。恋人と私だけで出かけるなんて。
「天童少女との勝負が終わった後に出かければ何の問題もない!気にするな!」
文机で事務作業をしていた彼は持っていた筆を傍に置き、私の頭をよしよしと撫でてくれた。
「うー……でも私は朝から出かけたかったです」
自分はどこまでお人好しなのだろうか。嫌気がしてしまう。
「嬉しいものだ。君が俺との時間をそんなに大事に考えてくれるとは」
「それは当たり前です。待ち望んでいましたから…。新しく見つけた爪紅があるから、杏寿郎さんに塗って貰うんだーって何日も前から楽しみに……」
「ん?どうした、急に静かになって」
「いえ…勢いに任せて話し過ぎたら少し恥ずかしくなっただけです……」
「そうか、俺はそんな君がもっと見たいが」
頭にあった掌が降ろされた —— かと思うと、その手が私の左手に絡められてグッと2人の距離が縮まってしまう。
「続きを聞かせて欲しい。楽しみに……の後だ」
ドキ、ドキ、と急に速くなる心臓の鼓動。
「あの……言わなきゃ……ダメですか?」
「ああ、言ってほしいな」
更に彼の顔が近づくと、絡められた左手の指先に口付けが数回落ちた。
「君のここに乗せられる色が何色なのか。俺はとても気になっている」
私の指先に唇を当てたまま、こちらを見てくる彼。これで顔の温度が一気に上昇してしまう。
「茜色……です」
「ほう、七瀬の刀身の色か。それは塗るのが楽しみだ。君の爪を色づける事が出来るのは俺だけだからな」
その言葉の後に音を響かせ、また指先に口付けをくれる杏寿郎さんだ。