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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第39章 雪嵐は春の訪れと共に / 🔥


「え?杏寿郎さんの強さ?」
「そう、七瀬は1番近くで炎柱を見てんだろ?どうなんだよ」

ここは鬼殺隊士の殆どが訪れる甘味処「以心伝心」

私の目の前の席に座って甘納豆を一つ一つ大事に食している女の子は、同じ炎の呼吸の使い手で同期でもある天童紗雪。
肩までの長さのやや癖がある髪の毛を頭の上で束ねており、顔立ちは”美人”の部類に入る人物。

10人並みの私から見れば、それはそれはもう羨ましい対象だ。


「超と言う単語を何回つければ良いんだろうね。それぐらい強いよ。手合わせだけじゃなくて、娯楽のカルタだったり勝負と名がつく物は全然勝った事ないもん」


はあ……と深いため息をついた私は目の前の塩大福をひと口だけ口腔内に入れる。甘さと塩気が上手く混ざり合っているこの大福は以心伝心で最も多く食べられている、わらび餅と人気を二分している甘味である。


「本当か?やっぱり聞いた通り、凄いんだな!炎柱。あたしも一度で良いから真剣勝負してみたい!」

「ねえ、紗雪。私の話聞いてた?とにかく信じられないぐらい強い剣士だよ。一般隊士の私達が真っ向勝負して勝てる相手じゃ…」

「いや、あたしはそんな相手だから余計に勝負してみたい!」


はあ……と右手を額に当てながら、再度ため息をつく私に全く構う事なく、目の前の友人はほとばしる思いを身体中から出している。
紗雪はいつもこうだ。向上心が天高く昇る龍のように高い。

いや、向上心は鬼殺隊士にきっと1番大事な事だろうから紗雪の精神は正しいかもしれない。

「なあ、炎柱の非番の日っていつだ?」

大事に一つずつ食していた甘納豆が小皿の上から全て消えていた。
抹茶をゴクっと飲んだ目の前の同期隊士は、最高潮と言って良い程に瞳を輝かせている。

次回の非番の日は杏寿郎さんと久々に出かけようと約束をしている。柱の非番は本当に貴重だから、知ってても教えたくない。
そんな彼の恋人としての思いが一瞬よぎるのだけど—


「七瀬もあたしと同じで強くなりたいって気持ちは高い方だろ?なあ、いつなんだよ!いくら柱が多忙だからって言っても、休みぐらいあるだろ?」

ずずいっと前のめりに体を寄せて来たかと思うと、ガシッと両手を掴まれた。その両の掌は自分と同じで硬く、豆もそこかしこに点在している。

「七瀬!!頼む!!」



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