恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第36章 未来の青写真〜早春〜 / 🔥
「そうですか?」
「ああ」
そしてまた1つ杏寿郎は彼女にキスを贈る。
「君と未来の話でもするとしよう」
「え……?」
彼は七瀬の膝裏と脇下に逞しい両腕を回すと、スッと立った。
「あの……杏寿郎さん…これって…」
彼女の顔が林檎のように真っ赤に染まる。
「寝室に行くぞ」
「あ、待って下さい。コーヒーがまだ飲みかけです…」
“後でまた淹れ直す”
そう言った杏寿郎は七瀬のおでこにキスを落とすと、スタスタと寝室に向かった———
夜通し2人で未来のシミュレーションを重ね、寝付いたのは夜明け前……。
★
それから半年後、テラス席がある一軒家風のカフェにて。この日の午前中に結婚式をすませた一組のカップルがいる。
時間は午後3時を回った所だ。
「向井先生、カナエ先生!おめでとうございます!」
グレーの細身のスーツを着た向井と、ピンク色のドレスを着たカナエは祝福の声に包まれていた。カナエは胸のすぐ下に切替があり、ストンと流れるスカートが特徴のエンパイアライン。
そう呼ばれるドレスを身に纏っている。
拍手があちらこちらから2人に贈られ、見つめ合う2人は幸せを絵に描いたような雰囲気だ。
「ありがとうございます」
本日の主役である新郎新婦はこの場に集まった招待客に深くお礼をした。
「先程、カナエと私は夫婦となりました。今日から色々な事があると思いますが、2人で手を取り合って共に歩んで参ります。短い時間ではありますが、どうぞ皆様楽しんでいって下さい」
七瀬はこの日、2人にありったけの拍手を贈った。