恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第36章 未来の青写真〜早春〜 / 🔥
「はい、これです。赤ペンで印がつけてある箇所」
「……ここか」
七瀬が杏寿郎に渡したのは、とある歌の歌詞。これは向井が授業で出した宿題である。各自で自分が好きなフレーズをピックアップし、歌詞に込められた思いなどを後日クラスで発表すると言う物だ。
歌のタイトルは「Cry Baby」
“傘はいらないから”
七瀬が赤ペンで印をしたのはそこだった。
「どうして傘はいらないんでしょうか」
「そうだな……」
杏寿郎は前後の歌詞と照らし合わせて考える。
『傘は雨を防ぐ物だが……今回は前回以上に難しそうだ』
ううむ、と唸る事10秒。
「……その次に”言葉をひとつくれないか”
それから”微温い(ぬるい)優しさではなく”とある。この微温い優しさが恐らく雨の例えなのではないだろうか?そして”抉るような言葉”と続いている」
「はい、それで…?」
「故に微温い雨より、抉られても良いから胸に刺さる言葉が欲しい……これが俺の考えだ。どうだろう」
杏寿郎はそこまで言うと、プリントを七瀬に返す。
「なるほど……雨の例えですか!確かにそうかも…やっぱり杏寿郎さんの洞察力は凄いです」
彼女はにっこりと笑って、ソファの側に置いてあったトートバッグにプリントをしまうと、コーヒーをズズッと飲んだ。
「頭の中がスッキリしたから、コーヒーも更に美味しくなりました。ありがとうございます」
七瀬はマグカップを一旦目の前のミニテーブルに置くと、杏寿郎の腕にスルッと自分の腕を回す。