恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第34章 狐に嫁入り? ③ / 🔥
心配そうに緋色の双眸が私の瞳を覗き込んで来る。
自分の目の中にもあると言う、狐火がゆらゆらと不安げに揺れているような……そんな印象を受けた。
「正直に言うね。ほんの少しだけど、怖さを感じた」
「そうだろうな……」
寂しく笑う彼。
「あ、でもね?」
「ん?どうした」
長い睫毛が瞼と共に一度閉じられ、また私を見つめてくれる。
今度は少し柔らかい眼差しだ。
「最初見た時、すっごく綺麗だなあって思ったの」
「綺麗、か…初めて言われたな」
「男の人に綺麗って言う表現はあまり使わないかもしれない。でもそれ以外思いつかなかったなあ、私は」
「いや、君にそう評してもらうのは悪くない気分だ。むしろ心地よい!」
にっこりと笑って私の頭に大きな掌をポン、と乗せてくれた。
2人の間に優しく、穏やかな時間が流れる。
「皆の元に向かおう」
「はい」
客間の襖を開けて、廊下に出る。右横を歩いてくれる彼の左手に思わず自分の右手が触れそうになるのを何とか抑えて、3人が待つ和室に向かった。
「そうか、素山が七瀬さんに……」
「ええ。冗談ではなく本気だと彼女に伝えていました」
ズズッとほうじ茶を一口飲む槇寿郎さんに、真剣な表情を見せながら杏寿郎さんは報告する。
「七瀬さんは、どう感じたの?」
次に瑠火さんが私に尋ねて来る。
「いえ、もう全く予想外の事を言われたので。思考が追いつきませんでした……」
狛治があんな風に自分を思ってくれていたなんて。以前の私ならもしかしたら受け入れたかもしれない。小さな頃からずっと知っている仲だし、気心も知れている。
でも、今の私は……