恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第34章 狐に嫁入り? ③ / 🔥
フッ——
「消えた?—— どこだ!」
狛治が辺りを見回した…かと思うと、わっ!な、何??
縁側から勝負の行方を見守っていた自分の姿がフワッと浮く。
「すまんな、狛治!連れていくぞ!」
庭にいたはずの杏寿郎さんがいつの間にか屋根瓦へ移動していて、私の体は彼の両腕に支えられていた。
いわゆる、お姫様抱っこと言うやつである。
「七瀬、母上がお呼びだ。君とまた話がしたいらしいぞ」
「え……そうなの??」
「ああ、それに今しがたの事も父上に報告せねばならない」
見上げた彼はまだ本来の姿。だけど背筋がぞくっとした先程の雰囲気はもうなく、普段通りだった。
「報告って……わあ!待って——」 「すまん、七瀬急ぐぞ!」
「次元・遡行(そこう)」
「おい!妖狐!まだ勝負は終わってないぞー!!」
狛治の叫ぶ声が段々と遠くなるのを聞きながら、私は杏寿郎さんの腕の中で意識をブツッと無くした。
★
「すまんな、いつも性急で。しかし今回ばかりは急がねばならなかった……」
「うん……もう何だか慣れちゃったよ」
「七瀬はやはり優しい娘だな」
そう私にニコッと笑う彼はもう普段の姿に戻っていた。それから以前泊まった時に使用した、客間の床にゆっくりとおろしてくれる。
「先程、俺の本来の姿を見ただろう?本当に怖くはなかったか?」