恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第9章 雨、飴、のち 虹 / 🌊
ぐ〜〜
恋人のお腹からなんとも間抜けな音が響く。
「すみません……」
唇を外して、少し赤くなった顔を俺に見せながら謝って来る。
「お腹すいちゃいました」
「……」
ぐ〜〜
呼応するように自分の腹の虫も鳴いた。
間が悪い。まあこれもいつもの事か。ふう、と1つ深呼吸して、彼女の頭を自分の肩に引き寄せた。
「あ!」
思い出したように七瀬は顔をあげ、巾着の中身を探る。
その手に持っているのは黄色い飴。確か ——
「べっこう飴か」
「はい!」
にっこりと笑顔を向けてくれたが、すぐにシュンとした顔になる。
「どうした?」
「1つしかなくて…」
どうしましょう……と首に手を当て、彼女は考え始めた。
「貸せ」
俺は恋人の手から飴を奪い取ると、包み紙を開ける。そして口にぽいっと放り込んだ。
「え?義勇さん、独り占めはずるいで……ん、」
飴を口に含んだまま、七瀬の唇を塞いだ。