恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第33章 狐に嫁入り? ② / 🔥
「美味い!」と連発しながら食べている杏寿郎さんは再び小狐姿になっていた。
「あ!杏寿郎さん、待って。それ私も食べたい……!」私が慌てて右手を伸ばしたのは、さつまいものデニッシュだ。
ゴマとサイコロ状のさつまいもが食パンの上に散りばめられているそれは間違いない美味しさだと、自分の直感が心に信号を送る。
お皿の上に載っている最後のデニッシュを一口齧る。すると口の中に広がるのはサクサクの食感とバターの風味。
ん……美味しい!幸せ……!ほっぺたが落ちるとはよく言われるけれど、本当にそんなおいしさ。
自分の右横で次々と座卓に並べられているスイーツとパンを品良く綺麗に食べる彼から、目当ての物を先に食べられないように私は必死になって攻防を繰り広げた。
「う〜ん……お腹いっぱい…はち切れそう…」
あれから晩御飯もご馳走になったのだけど、このご飯もまた絶品だらけでとうとう私の胃が悲鳴を上げた。今は用意してもらった客間に来ている。
「なかなか良い食べっぷりだったな!」
「いや……杏寿郎さんには負けるよ……」
もう人の姿に戻っている彼だけど、私のように食べ過ぎて苦しい…と言う事はなく、横になっている自分の隣でニコニコと笑っている。
「胃が落ち着いたら温泉に入って来ると良い。妖狐の里の温泉は疲れた体は勿論、心にも効能があるぞ!」
わあ!それは絶対入らなきゃ……。