恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第33章 狐に嫁入り? ② / 🔥
10年前。
私が小狐姿の杏寿郎さんを助けた時、たまたま彼の鼻が私の顔に当たってしまった事があった。
「そうそう、思い出した!それで縄から出れたんだよね…ってごめん、恥ずかしいから降りるね」
「む?俺はこのままでも一向に構わんぞ!」
やや含み笑いを見せながら言う彼にドキッと胸が高鳴ったけど、する…と降りて先程まで座っていた座布団に座り直した。
「そう言えば何であんな所にいたの?」
「ん……それはな」
あれ?何だか頭の上の両耳が赤くなった…。
「兄上がさつまいもに目がないと言うのは先程お話しましたよね?」
「千寿郎!それ以上は…」
珍しく慌て出す杏寿郎さん。
「ふふ、杏寿郎。七瀬さんはいずれ伴侶に…と考えている方なのでしょう?お話しておいたら?」
瑠火さんがふわっとした笑顔で彼に言うと、観念したように理由を話し始めた……。
「なるほど!人間の姿で、さつまいもの買い出しに来てたんだね!」
妖狐の世界にもさつまいもは存在しているようだけど、人間界の物には敵わないのだそう。
「うむ…。買った直後にさつまいもプリンをカフェと言うのか?そこで見かけてな。物凄く惹かれてそれも買ってしまったのだ。突然あの姿になれば混乱を招いてしまう。故に目立たない神社の裏で食べていたのだが……」
美味しくてついつい食べ過ぎてあの姿になった所を、運悪く狛治が彼を見つけて妖力封じの縄で縛ったようだ。
「よもや素山の人間に会ってしまうとは…しかし今思えば、あれも運命と言う物だったのかもしれない。七瀬にその後、会えたからな!」