恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第33章 狐に嫁入り? ② / 🔥
「時空の移動はあまり人間にとっては気分が良い物ではないのだろう?本当にすまないな」
眉を少しだけ下げて申し訳なさそうに言った男性は杏寿郎さんの父であり、妖狐一族を束ねている長(おさ)でもある槇寿郎さん。
目尻の皺や顎周りの髭を除けば、杏寿郎さんと瓜二つと言って良い容姿だ。長らしく、落ち着いた藍色の直衣(のうし)を身に纏っている。
「七瀬さん。ようこそ、いらっしゃいました。色々戸惑われている事もありますよね?お疲れでしょう。今、お茶と甘味を用意しましょうね」
涼やかな声で私に挨拶をしてくれた女性は杏寿郎さんの母であり、元は人間だった瑠火さん。
杏寿郎さんと同じ緋色の瞳。顔立ちは女の私が見惚れる程綺麗で、長い黒髪はゆるく束ねて胸元に流している。
着ている着物は黄色で、菖蒲(あやめ)が散りばめられていた。
「初めまして、七瀬さん。兄からお話を聞いて以来、お会いするのを楽しみにしていました」
本当に300歳なんだよね?と何度も不思議な気持ちになってしまう。私にそう挨拶をしてくれた少年は杏寿郎さんの弟の千寿郎くんで、花萌葱(はなもえぎ ※1)の直衣を着ている。
煉獄家のDNAって一体どうなっているのだろう。瑠火さんを除く3人があまりにもそっくりで、私は目を見開きっ放しだった。
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※1…若い青ネギの葉のような強く濃い緑色