恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第33章 狐に嫁入り? ② / 🔥
「私、行くよ。妖狐の世界の事がきちんと知りたいから」
「そうか!」
私がそう言った途端、物凄く嬉しそうな顔をする杏寿郎さんが何だか可愛い。
“杏寿郎さんの事も…”
喉元まで出かかったけど、これは口に出すのはやめた。
『よし、では2人をこちらに呼び寄せるとしよう』
「七瀬、こちらに」
槇寿郎さんが呪文を唱え始めると、杏寿郎さんが私の左肩を柔らかく抱き寄せてくれた。
わっ…近い!
肩に置かれた大きな手と、先程顔を近づけられた時と同じように杏子の香りが彼の直衣からふわっと鼻に届く。
『次元・遡行(じげん・そこう)』
槇寿郎さんの声が深く頭に響くと、10年前と同様に急にくらっと目眩がし、どこかの空間に飛ばされるような……そんな感覚を味わい、私は意識をブツッと無くした。
「着いたぞ」
「ん……」
ゆっくりと目をあけると、そこは20畳程の綺麗な和室で私は杏寿郎さんと正座で座っていた。
「よく来てくれた!」
目の前には杏寿郎さんによく似た男性が部屋の中央に鎮座しており、向かって右側には綺麗な女の人が、左側にはこれまた杏寿郎さんによく似た少年が座っている。
槇寿郎さん、瑠火さん、千寿郎くん…かな。