恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第32章 狐に嫁入り? ① / 🔥
「七瀬?どうしたの?」
「え…?」
気づけば私の目の前には両親の姿。
お母さんがさっきから何回か私の事を呼んだけど、返事をなかなかしなくて心配していたらしい。それもほんの1分間ぐらいの事なんだけど。
「うん、大丈夫。なんでもないよ。人がたくさんいるから少し疲れちゃったのかも」
「そう?なら良いのだけど…そろそろ21時ね。帰りましょうか」
えーもう?とちょっと抵抗すれば、夏休みの宿題まだ残っているだろ、とお父さんに言われて何も言えなくなり、しぶしぶその言葉に従った。
それにしても……あの狐のお兄さん、杏寿郎さんか。本当に私がはぐれた事になんてなってないや。
妖狐のお嫁さん……
そこまで思い浮かべると急に顔が熱くなって来て、お母さんにまた心配された。
こうして私のひと夏の思い出として、強烈に体と心に刻まれたこの経験。
それから10年の月日が流れて………。
私は22歳。大学四年生になった。
就活があともう一歩、と言う所から進めず、はあ…と落ち込んでいた所に窓の外から見えた丸い綺麗な黄金の月。
何となく惹かれるようにベランダに出ると、その月が一瞬キラッと光って……。