恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第32章 狐に嫁入り? ① / 🔥
私と杏寿郎さんの鼻同士が当たるんじゃないか。
そんな距離まで顔が近づく。
「七瀬」
優しく名前を呼ばれると両頬を大きな手で包まれた。
威圧的な雰囲気は全くないのに、私は彼の顔から目が離せなかった。
「どうだ?見えるか?」
は、は、恥ずかしいよう……。だけど、この様子だと確認しないと絶対離してくれなさそうだよね。
顔の表面の温度は一体何度ぐらいになっているのだろう。
そんな状態で私はじぃ…と緋色の瞳の奥にあると言われている狐火を探した。
すると。
真ん中の瞳の中に燃える人魂のような、そんな火が確認出来た。
「あ、うん…見えたよ、凄く綺麗な狐火が」
心臓がさっきからずっと騒がしい。
「そうか!やはり君で間違いなさそうだな!」
私の両頬から杏寿郎さんは手を離すと、よしよしと大きな右手で撫でてくれた。
「あの、さっきのお嫁さんの件なんだけど」
「うむ、何だ」
「それって決定事項なの?私、まだ子供だから結婚とかよくわからなくて…」
“好きな人もいないし” その言葉は喉元まで出かけたけど、飲み込んだ。
「俺の母も丁度君の歳ぐらいか。父と会ったと聞いている。確かに戸惑ったと聞いたが…」
「うん、それでお母さんはどうしたの??」