恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第32章 狐に嫁入り? ① / 🔥
直衣(のうし)はお兄さんの瞳とは少し違う赤系の色だった。
それは夕暮れを思わせる……。
「そうだ!茜色!」
「む?どうした?」
お兄さんは大きな両目を少し開いて私に聞いて来た。
「あ、ごめんなさい。直衣の色だよ」
「ほう、これが直衣と知っているとは感心だな」
ふわっと大きな掌が私の頭に置かれた。ドクン!と心臓が大きく跳ねる。
「う、うん。ありがとう…こないだ歴史の授業で習ったんだ」
「ふむ、人間達が勉学を学びに行く学校と言う所だな」
「え、よく知ってるね。どうして?」
びっくりしてしまった。
「我ら妖狐の一族は代々人間の中から嫁を迎える風習があってだな……。俺の母上…」
「妖狐?」
私が聞き返した途端にガシッと肩を捕まれ、瞳を覗き込まれる。
「………!!」
な、な、な、何?何?何?
お兄さんの綺麗な顔がすぐ近くに来て心臓が爆発しそうな状況になった。
「両の瞳の奥に狐火……そうか!君だったか!!」
「うわあ!!」
お兄さんは私を大きな胸の中にぎゅっと抱きしめた。
「うむ、耳の後ろからほのかに感じるこの匂い。間違いないな」
「あの、あの、何の事」
全身の力を振り絞って、お兄さんの胸を両手でパン、パンと柔らかく叩く。
「ああ、すまない。嬉しさのあまりつい」
そう言ってお兄さんはゆっくりと私を離してくれた。
「名乗るのが遅くなった。俺は杏寿郎。九尾の狐だ」