恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第32章 狐に嫁入り? ① / 🔥
「わあ、大変。すぐ解いてあげるね。待ってて!」
小狐に駆け寄り、よしよしとピン!と立っている三角形の両耳の間を少し撫でた私は、解く作業に取りかかる。
ん…かなり硬く縛られてるなあ。これ解けるかな……。
大人しくしている小狐がコーン…と切なげな表情で鳴いた、と思った次の瞬間——。
私の右頬に小狐の鼻先がちょん、と触れる。そこから放射状に眩しい光が辺り一面に広がって行った。
……眩しい!!目が開けれない………。
1分には届かない短い時間だったと思う。光が収まっていくのがわかった私はゆっくりと慎重に目を開ける。
「君のお陰で助かった!礼を言う!」
「え……」
目の前に現れたのは小狐ではなく、背が高くてとても綺麗な顔をしたお兄さんがいた。
「狐様…?」
人間じゃない。感覚でわかったけど、何故か怖い気持ちは自分の中に生まれなかった。
「む?俺が怖くないのか?」
「うん……だってお兄さん、とっても優しい目をしてるから」
肩まである鮮やかな金色の髪のてっぺんには左右両側にちょこんとついている三角形の耳、大きな赤い両目の上には上向きになっている凛々しい眉毛。
来ている服は何だっけ…。こないだ歴史の授業で習ったじゃない。平安時代の上流貴族の人達が着ていた……
そうだ!直衣(のうし ※1)だ!
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※1…… 上流貴族が来ていた平服。