恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第31章 近くて遠い未来を思う〜彼目線〜 / 🔥
「……これだけ?」
「あまり煽るな」
「今日は単独任務だから、他に隊士はいないの。だから…」
彼女が俺の両頬を小さな掌でそっと包む。
「今夜はあなたともっと一緒にいたい」
「七瀬…煽るな、と言っているだろう……」
俺も同じ気持ちだがな。
七瀬の唇を親指でそっとなぞった後、2回目の口付けを贈った。
お互いの顔がゆっくり離れると、恋人は興奮を抑えきれないと言った表情でこう言って来る。
「ねえ、杏寿郎。私もあなたと同じ色にしてみたよ」
驚いた。目の前に自分と同じ橙色の爪紅が現れたからだ。
「こうしたら、あなたといつも一緒にいれる気がして。それにね…」
「なんだ?」
「橙色は元々、凄く好きな色なの」
「……また可愛い事を言ってくれる……」
そうだ。俺は彼女のこう言う所が好きなんだ。
「君に良く似合っているぞ」
七瀬の両手を自分の両手で愛おしい思いと共に包む。
すると、人間の温かい温度が掌に染み込んだ。
「杏寿郎の爪はやっぱり綺麗な色だね」
彼女は俺の指先に優しい口付けを落としてくれる。
綺麗、か。この手がそんな言葉で表現されるとは全く思わなかった。