恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第31章 近くて遠い未来を思う〜彼目線〜 / 🔥
今宵も鬼は丑寅の方角からやって来る。
肩まである長さの金色の髪を頭の上で1つに結んでいる、この鬼の名は“上弦の参”の杏寿郎。
小紫色の着物に濃紺の袴。肩にふわりとかけてあるのは裏地が緋色になっている黒い羽織と言う出立ちだ。
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「雷の呼吸」
「弐ノ型・稲魂」
稲妻の塊が5つ程、鬼に落ちて行くのを俺は少し離れた所から見ていた。
頸と胴体がボロッと灰になっていく。
刀身に雷光が走っているような刀を一振りした彼女は付着した鬼の血液を飛ばし、元の鞘にチン……と納めた。
「ふう」
そしてほっと一息をつく彼女。
よし、もう声をかけても大丈夫だろう。
「七瀬」
俺は愛おしい人の名前を呼んだ。
「杏寿郎!」
こちらを振り向いた彼女がとびきりの笑顔を見せながら走って来ると、俺に勢いよくぎゅっと抱きついて来る。
七瀬は鬼の俺達を狩る組織、鬼殺隊に所属しているが、彼女は大切な自分の恋人だ。
「俺が言うのもおかしな話だが、見事な剣技だったぞ。七瀬」
彼女の頭を優しく撫でると、艶のある髪が指を通り抜けていった。
「ありがとう。あなたに会いたくて頑張っちゃった」
「…嬉しい事を言ってくれるものだ」
七瀬の顎を自分の鋭い爪が当たらないようにくいっと掴み、柔らかい口付けを1つ贈る。