恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第31章 近くて遠い未来を思う〜彼目線〜 / 🔥
鬼になって200年経つが、この鋭い爪でどれくらいの人間を殺めた事だろう。
来る日も来る日もそんな日々だったのではっきりとは把握していないが、上弦と位置される場所にいるぐらいだ。
相当な数だろう。千…万…それ以上か。
そんな血の海に濡れた爪先を恋人は”綺麗”と言ってくれた。
「良い提案があるぞ。鬼にならないか?七瀬。そうすれば俺と共にいられるが……」
愛おしい気持ちで胸がいっぱいになった俺は彼女にそう聞いてみる。
「うーん…そうだね。今はまだ覚悟が決まらないけど……」
その後、俺の左の耳元に右手と口を寄せてこそっと呟く。
“いつか私が鬼になったら....杏寿郎のお嫁さんにしてね?”
思わず、顔が綻んでしまった。
「承知した。その時を楽しみにしておこう」
彼女に3度目の口付けを贈る。先程の2回の口付けとは違い、熱く深く恋人の唇を求めた。
牙は極力あてないように。そうしなければ彼女の唇を傷つけてしまうからだ。
「七瀬の唇は……本当に甘いな」
そのまま俺は愛しい人との口付けを余す所なく堪能した。
近くて遠い、遠いようで近い。
きっとやって来るであろう…七瀬との未来を
胸に抱きながら——
end.