恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第30章 今日書くの、やめても良いですか? / 🎴
ピンポーン……
ドアホンが鳴った。私は少し浮き足立った気分で鍵を開け、ドアを開いた。
「七瀬さん、こんにちは!製本出来たからお持ちしましたよ。お好きなこれも」
私の担当編集者は緑色の市松模様のマフラーをぐるぐる巻きにした姿で、やや高めのテンションでそう言った。
右手に持っているのは、大好きな苺大福だ。
「炭治郎くん、いらっしゃい。美味しい紅茶のティーバッグ見つけたの。一緒に飲もう?」
はい、といつもの陽だまりの笑顔。
あれから彼とは半歩程前進して、お互い下の名前で呼び合うようになった。
部屋に入って、苺大福を一緒に食べながら本の事も含めて色々話をする。
「俺、いつだったか編集長にプロの作家に1番必要な事は何かって教えて頂いたんですけど……」
「うんうん、それで?」
「編集長は楽しい時でも苦しい時でも、最高と言えるものを書く事だ、そう言われていました。もちろんそれもとても大事な事なんですけど、もう一つ見つけました」
「へえ、それってどんな事?」
私は苺大福を食べる手を一度止めて、彼の返答を待つ。
「物語を綴るのがとにかく大好きって言う気持ちも大事だと思います。好きじゃなければ、辛くても書くって言う事は出来ないんじゃないかって………」