恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第30章 今日書くの、やめても良いですか? / 🎴
「これ……」
紙の束を彼に渡すと、竈門くんは目を見開いた。
「最近はパソコンに打ち込んでデータをメールで送ったり、こうやってうちに来てもらった時、文章を一緒に確認しながら打ち直したりしてばかりでしょう?」
「昔みたいに手書きで文字を書く事をしてないなあって思って。去年ぐらいからかな……とにかく思いつく言葉をメモ帳やチラシの後ろに書いてたの」
“悲しい”
“また恋が終わった”
“自分はこれから生きていけるのかな”
などなど……マイナスの言葉ばかり。
だけど、今思い返すとこれらがとても大切な物に思える。
「恋は機嫌を損ねると、すぐどこかに行ってしまう事が多いでしょう?でも文字だけはずっと自分の側にあったの。どこにも行かずに」
「変わらずに私の1番近くにあった。どんな時でも」
★
それから3ヶ月後、炭治郎は天元のデスク前にいた。
七瀬が執筆した原稿が無事に製本まで辿り着き、一冊の本として出来上がったからだ。
「……”恋がこぼれ落ちないように”…ねえ」
1番人目に触れる表紙のタイトルにはそう書いてあった。
帯には” 1番大事な人はすぐ近くにいます” と記してある。