第30章 今日書くの、やめても良いですか? / 🎴
彼から貰った苺大福をリビングに置き、私は竈門くんと自宅マンション近くのファミレスにやって来た。
何故ファミレス?と疑問に思っていたのが伝わったのだろう。
「ここのドリンクバーのメニューのラインナップ、カフェにも負けてなくて。先日会社近くの店舗に行った時、これは絶対先生が気にいるだろうな…と言う飲み物を見つけました」
“カフェにも負けない”
“先生が気にいる”
この2つのワードに否が応でも期待値が高まる。
私は作家になる前からカフェが大好きで、色んなお店を巡って来た。だから都内のお店はほとんど網羅した…と言っても良い。
その私に年下の編集者がこれ以上ないぐらい瞳を輝かせて伝えて来ている。
一体どんな飲み物なんだろう。
出入り口からお店に入ると、女性の店員さんが席に案内してくれる。
「お決まりになりましたら、奥にございます備えつけのタッチパネルでご注文お願い致します」
彼女が立ち去ろうとした瞬間、私の前に一枚の紙ナプキンがスッ…と置かれた。
ん?何だろう……。
不思議に思いながら、私は四つ折りになったナプキンを開いていく。
「いつも作品楽しく拝見しています。沢渡先生の大ファンです。これからも頑張って下さい。ずっとずっと応援しています」
咄嗟に書きつけたのだろう。ほぼ走り書きの文字だったが、今の自分の心には充分に染み渡った。