恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第29章 夕暮れネイルに色香のeyes / 🔥✳︎✳︎
「おはようございます…」
キッチンでコーヒーを淹れる用意をしている彼に挨拶をする。
「おはよう、七瀬。君も飲むか?」
昨夜のやりとりなんてなかったかのような溌溂とした杏寿郎さんに感心してしまった。
「はい」と頷いた私は彼の右隣に並ぶ。
「朝食は食べたんですか?」
「いや、君が起きるのを待っていた」
「ありがとうございます。今からだとブランチになっちゃいますね」
冷蔵庫を開けると、卵と牛乳が目に入った。
確かこないだ買ったホットケーキミックスがあったから…パンケーキでも作ろうかな。
そう思っていたら、後ろから彼がぎゅっ…と私を抱きしめて来る。
「杏寿郎さん?どうしたんですか?」
「うむ…」
冷蔵庫の扉が一旦閉まると、くるりと自分の体が彼の方に向かされた。
「綺麗な君も麗しかったが、やはりいつもの君が俺は好きだ」
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
「そうですか?」
「ああ」
「朝になったから、後でネイル落としましょうか」
私は彼の両手を自分の両手に乗せながら提案してみた。
「とっても綺麗な指先ですけど、これ以上は私の心臓が持ちそうにないので……」
「俺はそれをもっと見ていたいが?」
……またそう言う事を言う……。
「杏寿郎さん、もう朝です。茜色は終わりましたよ?」