恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第29章 夕暮れネイルに色香のeyes / 🔥✳︎✳︎
「可愛い杏寿郎さんだ…」
ふふっと笑いが出る私に、彼は口に当てていた右手を外してコツンと優しく額をこづく。
「かわいいは男に言う言葉ではないと以前言わなかったか?」
「言われましたね……でも」
「カッコいい杏寿郎さんも大好きですけど、かわいい杏寿郎さんはもっと好きです」
そう言った後、私は彼の両頬を包んで口付けを贈った。
「……左手と左足」
「え?」
杏寿郎さんが私の左手をそっと掴んで、指先にキスを落とす。
「この2つにもやはり載せないとな」
「載せるってやっぱり……?」
「ああ」
かわいい杏寿郎さんはいつも一瞬でいなくなる。彼の双眸にまた炎が灯ってしまった。
その後、私は恋人に茜色の指先と足先に苺のジャムを載せられ、夜明け前まで体を繋がれた。もちろん赤い花の数もまた増えた——
次の日の朝 —— 10時半。
んん……朝かあ。気だるすぎる体を起こすのはなかなか骨が折れそうだ。
ちらっと横を見れば、恋人の姿はない。リビングから音がするので、もう起きているのだろう。
私は毎回思う。
柱の体力は底なしだなあ、と。
ベッドの下に落としてある下着と寝巻きにゆっくり手を伸ばす。
そして体を見てみれば、至る所に咲いている赤い花達。
両胸には一際大きな花が一輪ずつ。
朝から顔を真っ赤にしながら、私は服を着たのだった。