恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第29章 夕暮れネイルに色香のeyes / 🔥✳︎✳︎
「七瀬…載っているジャムを…はあ…落とさないように」
「ん…ちょっとそれは…むずか…」
人差し指、中指…と彼が次々にジャムを熱い舌で絡め取って行く。
「は…あ…」
「ん…これで最後だな…」
ちゅっ…と言うリップ音と共にジャムが全て取り去られた。
私の指先に残されているのは、彼の吐息と舌の感触と茜色のネイル。
「……心臓止まるかと思いました…」
左手を胸に当てると、脈打つ鼓動がありえないぐらい速い。
「杏寿郎さん…艶やかすぎですよ…」
「そうか…?」
よしよしと頭を撫でる彼は、やっぱり余裕の表情だ。
「左手も…と思ったのだが、それはやめとこう」
「良かった……」
私は心から安堵する。
「しかし…」
「え…?」
彼の双眸に炎がポッ……と灯る。
「俺にものせてくれないか?」
「のせる……」
「うむ!」
ずいっと小皿が私の目の前に出される。
「……楽しんでます?」
「少しだけ」
親指と人差し指を1センチ程離しながら、彼はそう言った。
私は彼からのこう言う提案に物凄く弱い。はい、と了承の返事をして、小皿を受け取ると深呼吸を一回する。
……よし。
先程、恋人がやったように右手の人差し指に適量のジャムを掬い、杏寿郎さんの茜色の指先にちょん、ちょん、とのせて行った。