恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第29章 夕暮れネイルに色香のeyes / 🔥✳︎✳︎
——5分後。
「今日はこれにしようと思っていたんです」
トートバッグに入っていたネイルの容器を彼に見せる。
「茜色か。君の刀身の色だな」
綺麗だ…と目を少し細めて笑う杏寿郎さん。
寝室の電気をリモコンで少し明るくし、体が冷えそうだったので私達は一旦服を着ている。
お願いします…と言って、容器を恋人に渡した後は右手を彼に差し出す。
蓋を開けた杏寿郎さんは容器からネイル液をハケに適量取ると、私の右手の爪に茜色を塗り始めた。安定させる為に自分の左掌に私の右手をのせている。
右手が終われば、左手を彼の掌にのせてまた同じように塗ってもらった。
「久しぶりに塗ったが…どうだろうか?」
ハケを容器に入れながら聞いてくる杏寿郎さんは、少し不安そうな様子。
私は改めて、自分の両手に視線を移す。
夕焼けを思わせる暗めの赤色は、以前爪に塗った群青色と同じでなかなか大人っぽい。
「凄く綺麗に塗れてますよ!やっぱり杏寿郎さんは上手です…」
感激で心をいっぱいにしながら、指先をまじまじと見つめる。
「嬉しいか?そんなに」
「はい!それはもう…。自分で塗る時もテンション上がるんですけど、大好きな人に塗ってもらうのは嬉しすぎて感激しちゃいますよ」