恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第27章 炎柱から次期鳴柱への就任祝い / 🔥
「すみません、先程のやりとりを聞いてしまいました」
「ああ…いえ。大丈夫です」
「自分にも先輩ではないんですが、同期の隠でとても仲が良い奴がいるんです」
「へえ…そうなんですね」
急に隣にいる彼を身近に感じた。
「仲も良いんですが、喧嘩も同じくらいしていまして。いつも自分からけしかけてしまうんです。くだらない事が理由で」
「はは、俺達もそうでした。大体吉沢さんからで…」
ふう、と1つ息を吐いた彼は驚くような事を言い始めた。
「自分は泣けないんです。”男は人前で涙を流すな”小さな頃からずっと父親に言われて育てられたのもあって……」
だから…と続ける。
「泣きたい時に泣ける、あなたが私は羨ましいです」
「羨ましい……ですか」
「ええ」
あ、もしかして………
「仲が良い隠の方って」
はい、と頷いた彼はこう続けた。
「悲しい時はもちろん、嬉しい時も人目を憚る事なく…真っ直ぐな男です」
「そうなんですね」
………そう言えば吉沢さんも同じ事を言ってたな。
“お前は泣きすぎなんだよ”って……。
「申し訳ありません。自分の話をベラベラと…」
「あ、いえ。大丈夫です」
頭巾の間から見える目から涙は出ていない。けれど、とても悲しい気持ちなんだな…と言うのは伝わって来た。